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徒然花

生きる意味を求めて

松岡正剛『多読術』

松岡正剛さんの

『多読術』という本を読んだ。

 

この本の中で、

「読書した内容を独り占めしない」(慎独)

ということが書かれていた。

なので、この本について書いてみようと思う。

 

この本にはたくさんの「読書法」

と呼ばれるものが書かれているが、

今回の記事では

この人の考え方の一部を、

本の中から紹介したい。

 

まず

本の内容に入る前に、

確認しておきたいことがある。

 

それは、

読書をするときに、

読む人は、

内容をきちんと読み取らなければいけない

という先入観にとらわれすぎている人が

多いということだ。

 

学校の国語の授業では、

確かに読みの正確さが要求された。

しかし、

読書は正確に読むだけが読書じゃない。

 

松岡さんは、

様々な本の読み方を紹介している。

その中でもわたしが興味深く思ったのは、

「(本は)読む前に何かが始まっている」

という考え方。

 

ある読者においしいものが、

他の読者においしいとはかぎらない。

 

それはどんな著者の

どんなテキストも同じことで、

ということは、

自分がその本に出会ったときの条件に応じて

読書世界が独得に体験されるということです。

松岡正剛(2009)『多読術』、ちくまプリマー新書

 

つまり、

本を読む場所や時間、

体調や精神状態、

その本を選んだ理由(それはジャケ買いかもしれない)、

また誰かから薦められた経緯などなど。

 

「読む前に何かが始まっている」

とはこういうことだ。

これは要するに、

読む本を通して自分を知ることができる、

ということだ。

 

例えば、

分かりやすいところでいけば、

「人から好かれる20の方法」

というタイトルの本を買ったとする。

 

この本を買った理由は、

おそらく「自分は他人から嫌われないようにしたい」という気持ちを持っているからだ。

 

つまり、

その不安な気持ちを

埋めてくれる本を探しているわけだ。

 

こうして、

選ぶ本から自分を知ることができる。

 

 

 

知ることができるのは、

何も不安な気持ちばかりではない。

自分の「好み」を知ることもできる。

 

著者のオススメの本の読み方に、

以下の2点がある。

 

1、自分の気になることがテキストの"どの部分"に入っているのか、それを予想しながら読むこと

 

2、読みながらリアルタイムに感じる、ということ。読んでいる最中に何を感じたかを書き込んでおくのがよい。

 

こうすることで、

自分の今の関心が浮き彫りになる。

自分が今、何に関心があるのか、

どのように思考しているのかを記録することができる。

 

この関心や思考の集積から、

自分の好みというものが徐々に見えてくる。

決して「好み」というかたまったものが

あるわけではないと著者は言う。

 

しばらくとんこつラーメンを食べていないから、

そろそろこってりとした

旨いラーメンを食べたいなと思っていても、

その日になってカラダの調子が

ラーメンに向かっていないこともある。

 

また、

ふだんはラーメンを食べたあとは

何も飲まなかったのに、

その日は食後にどうしても珈琲が飲みたくなった、ケーキを食べたくなったということもある。

 

そのように、「口にするもの」も自分では

気がつかないことがけっこうあるんです。

 

そこが重要なところで、

自分では気がつかないけれど、

実は「好み」というものは

細部においてはきわめて多様で、

複雑だということです。

 

その上に、

おおざっぱな「傾向」というものが

ぼんやり成り立っている。

 

「好み」は非常に多様で、

バラエティに富んでいるのです。

 

それが個性というものを

成立させている。

前掲 p.131-132

 

こう書いた上で、

「その「好み」の中身は、

自分でもだんだん発見していくものなんです」

と書いている。

 

つまり、

本は新しい知識を手に入れるためだけに

存在しているわけではなく、

自分を知るツールとして有効だということだ。

 

 

この本は、

よく見るような

読書術の本とは一線を画している。

 

しかし、

インタビュー形式で書かれているので、

語り口が易しく読みやすい。

 

読書ライフを

もっと豊かにしたい方は、

是非一読されたい。